葬儀での遺族のマナー
2023.8.21
ご葬儀に遺族として参列する機会は滅多に訪れるものではありません。参列の際には、身だしなみや持ち物などについて不安を感じる方もいらっしゃることと思います。
以下では、ご遺族として葬儀に参列する際に気を付けるべきマナーや注意点についてご紹介いたします。
ご遺族の方
葬儀でのマナーを知りたい方
〜そもそもご遺族ってどこまでの範囲〜
葬儀において、ご遺族として扱われる範囲は一般的に「配偶者、子ども、両親、祖父母、孫、兄弟姉妹」とされています。
法律上では遺族補償の受給権者を明確にするために利用されることもあります。
ただし、ご葬儀においては上記の範囲に限らず、それ以外の6親等内の血族はご親族とされ、ご親族として参列することが一般的です。
〜ご遺族として参列する際の身だしなみ〜
ご葬儀にご遺族として参列する際、身だしなみに関して気になる方も多いかと思います。基本的に、ご葬儀にご遺族として参列する場合の服装は、ご葬儀に一般の参列者として参加する場合の身だしなみと大きく変わりません。
ただし、ご遺族としてご葬儀に参列される場合は、ご親族だけでなく故人の友人や知人、葬儀関係者などからも見られる機会が多くなります。そのため、自身が気づかないうちに葬儀の場にふさわしくない印象を与えてしまったり、だらしなく見えてしまったりすることも起こりかねません。
以下では、ご葬儀にご遺族として参列する際の身だしなみについて見ていきましょう。
【男性の服装】
[洋装の正式礼装] 喪服(ブラックスーツ・ブラックフォーマル)
・生地は黒で光沢素材ではないもので(上着はシングル・ダブルのどちらでも問題ありません)
・ベルトは、黒無地のシンプルなデザインのもの
・靴下は、黒無地
・靴は、紐で結ぶタイプの黒い革靴
[和装の正式礼装] 紋付き羽織袴
・羽織は、黒羽二重、染め抜き5つ紋付き
・和装の紋は、左右胸元に2つ、左右袖それぞれ2つ、首筋に1つ紋の5つ紋
・袴は、仙台平もしくは博多平
・羽織紐は、丸組みの平打ちで、色は白か黒
・草履は、畳面つきのもので、帯は博多の角帯、鼻緒は黒
【女性の服装】
[洋装の正式礼装] 喪服(ブラックスーツ・ブラックフォーマル)
・生地は黒で光沢素材ではないもので、パンツスタイル、ワンピース、アンサンブル
・ストッキングは、黒色の薄手ストッキング
・靴は、黒のシンプルなパンプスを選び、素材は革のもの、もしくは布のもの
[和装の正式礼装] 着物
・着物は艶消し黒無地・染め抜き5つ紋付き
・生地は羽二重か一越(ひとこし)ちりめん
・半襟・長襦袢・足袋は、白を選ぶ
・帯は、黒の名古屋帯
※髪飾りや帯留めは原則としてつけない
【子供の服装】
・新生児~1歳になるまでの赤ちゃんは、モノトーンのロンパース
・1歳を過ぎたら、上下別々のコーディネート
下は黒のスカートもしくは黒のズボン、上は黒もしくは濃紺のカーディガンにシャツ
・靴は、エナメルに金具がついた光る素材のものは避け、黒のスニーカー
※学生は学校の制服が喪服になります。
制服がない場合は、黒や紺、グレーなどの地味な上下に、白シャツを着用します。
〜見落としがちなポイント〜
[アクセサリー]
男性のアクセサリーに関しては、基本的にはすべて外すことがマナーですが、結婚指輪は着けたまま参列することができます。ただし、他の派手なアクセサリーは避けるべきです。
[腕時計]
腕時計を身に着けていることも問題ありませんが、目立たないシンプルなデザインのものを選ぶことが重要です。色はシルバーや目立たない色を選び、文字盤は白か黒が好ましいです。これらの配慮をすることで、葬儀の場での適切なマナーを守ることができます。
[メガネ]
メガネのデザインも意外と忘れがちです。お悔やみの場であるため、他の参列者や遺族への配慮が大切です。メガネのデザインには厳格な決まりはありませんが、大人のマナーとして落ち着いた選択が望ましいでしょう。
可能であれば、色付きのレンズは避け、フレームの色は黒や紺色などの落ち着いた色を選ぶのが理想的です。極端に太いフレームや奇抜なデザインの丸メガネなどは、どんな色でも目立ちすぎてしまうことがありますので避けるべきです。
また、社会人としてさまざまな場面に出席する機会が増えるため、普段使いのメガネとは別にシンプルなデザインのメガネを用意しておくこともおすすめです。これにより、冠婚葬祭などの重要な場で適切なマナーを守ることができます。
[革製品]
殺生を想起させる可能性があるため、お葬式の際には革製品をできるだけ身に着けないように心掛けてください。特に、動物の革と明確にわかるようなクロコダイルなどの革製品は避けるべきです。
ただし、ベルトや靴などの一般的な革製品は問題ありません。ただし、なるべく目立たないデザインや地味な色合いのものを選ぶことが望ましいです。
〜当日の持ち物〜
[香典と袱紗]
袱紗のカラーバリエーションは豊富ですが、弔事では寒色系を使います。
紫に関しては慶事と弔事の両方で使用できるので、1枚用意するなら紫を選びましょう。
[ハンカチ]
白や黒、グレーなどの色合いが落ち着いた無地のものが適切です。一方、柄物や派手なデザインのハンカチはマナーに反するため避けるべきです。ポケットなどさっと取り出せる場所に入れておくと良いでしょう。
[数珠]
数珠は宗派によって違う種類が存在しますが、多くの場合、仏教式のお葬式で使用されます。そのため、幅広い宗派に対応できる数珠を準備しておくことが安心です。ただし、キリスト教式のお葬式の場合には数珠は使用されないため、用意する必要はありません。
[傘]
葬儀では基本的に黒色の傘が望ましいとされています。黒色の無地の傘を選ぶことがいいでしょう。
もし黒い傘が手元にない場合、紺色やグレー、深緑などのダークカラーの傘であればマナー違反にはなりません。柄物や派手な装飾が施された傘を持っている場合には、今後のためにも黒色の傘を1本用意しておくことをおすすめします。
黒色のサブバッグやストッキングの替えもあるともしもの時に安心できます。
〜ご遺族の挨拶について〜
葬儀の際、遺族が参列者に対して挨拶をする機会が多くあります。挨拶は簡潔であることが求められますが、参列していただいたことや故人が生前お世話になったことへの感謝の気持ちを伝えることが重要です。
挨拶時の注意点は次のとおりです。
重ね言葉を避ける。不幸を繰り返さない、という意味があります。
「またまた、ますます、次々」など
不幸を連想させる言葉をさける
「死ぬ、消える、落ちる」など
【お通夜式の最後に喪主からご会葬者への挨拶を行う文例】
本日はお忙しい中、夫○○のためにご丁寧なお悔やみをいただき、心から感謝申し上げます。
この場を借りて、皆様方には生前の○○が大変お世話になりましたことを、深く感謝いたします。○○は周囲の温かなご支援にいつも救われ、幸せな時間を過ごすことができました。皆様のお陰で、○○の生涯は充実したものとなりましたことを心から感謝しております。
また、ささやかではありますが、別室にお食事のご用意をさせていただきました。故人の供養の一環として、お召し上がりいただければ幸いです。どうぞお気兼ねなくお過ごしください。
最後になりますが、改めまして皆様のご参列に心から感謝申し上げます。
【通夜の振る舞い終了時に喪主からご会葬者への挨拶を行う文例】
本日はお忙しい中、○○の通夜にご参列いただき、まことにありがとうございました。
皆様のおかげで、円滑に通夜を終えることができましたこと、深く感謝申し上げます。
もう夜も更けてまいりました。家族一同で○○を見守りますので、どうぞご自由にお引取りくださいませ。
最後になりますが、改めて皆様のご参列に心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。
【ご葬儀・告別式の終了時に喪主からご会葬者への挨拶を行う文例】
本日はお忙しい中、○○の葬儀・告別式にご会葬いただき、誠にありがとうございました。
故人は生前、皆様に大変お世話になりましたことを心から感謝しております。
○○のご逝去後も、引き続き皆様のご指導やご厚誼を賜りますよう、お願い申し上げます。
本日は誠にありがとうございました。
【遺族・親族代表からご会葬者への挨拶(出棺の前)の文例】
本日は父○○の葬儀に際し、お忙しい中ご会葬いただきまして、誠にありがとうございました。故人もきっと喜んでおられることと思います。
残された私ども遺族、親族にもご厚情を賜りますようお願い申し上げます。
この場を借りて、簡単ではございますがお礼の挨拶にかえさせていただきます。
ご参列いただきました皆様に、心からの感謝の気持ちをお伝えいたします。
本日は誠にありがとうございました。
〜最後に〜
この記事を監修した葬儀のプロよりコメント
ご葬儀におけるマナーは
一通り把握しておくことが重要です
参列される際には、服装や髪型などの身だしなみに気を配り、挨拶の際には、簡潔であることが大切です。ご会葬者や葬儀関係者に対し、感謝の気持ちや故人への思いを伝えることが大切です。お礼の言葉や深い感謝の気持ちを込めて、お話しすると良いでしょう。
また、いざという時に備えて、ご葬儀でのマナーを事前に把握しておくことで、より落ち着いた対応ができます。
早稲田大学大学院にて研究。大学卒業後、業界最大手企業へ入社。ライフエンディング領域における多岐にわたる業務に従事し、幅広い分野を経験。仏教葬祭アドバイザー、消費生活アドバイザー、ファイナンシャルプランナー2級、高齢社会エキスパートの資格を取得。横浜葬儀社の事業責任者として、専門的なアドバイスとサポートを提供し、故人様とその家族様にとって安心した葬儀サービスを提供することに全力を注ぐ。