火葬の後に葬儀を行う骨葬とは?
通常の葬儀とは異なる骨葬について説明します。骨葬は、火葬を先に行い、その後に葬儀、告別式を執り行うスタイルを指します。
「火葬の後に葬儀を行う」と聞いて驚かれる方もいるかもしれませんが、全国的に見ると骨葬が一般的に行われている地域も多くあります。喪主が骨葬を選択する理由は様々ですが、何かしらの事情がある場合に選ばれることもあります。
骨葬の意味、マナーや儀式について、わかりやすく紹介いたします。骨葬に関心のある方や理解を深めたい方にとって、参考になるでしょう。
骨葬を検討の方
骨葬が何か知りたい方
骨葬のメリットデメリットを知りたい方
〜骨葬ってどんなことをするの?〜
亡くなった方を弔う際には通常、お通夜、葬儀・告別式、そして火葬の流れで葬儀が行われます。
ただし、地域の風習や葬儀・告別式の日程によっては、先に火葬を行い、その後に葬儀・告別式を行うこともあります。このような形式の葬儀を「骨葬」または「前火葬」と呼びます。
骨葬では、葬儀・告別式の際に遺体ではなく遺骨が祭壇に置かれ、弔辞やご焼香などが行われます。遺骨が供養の対象となる葬儀となりますが、他の儀式の流れは火葬の前に行う葬儀と変わりません。骨葬は地域によって異なる儀式が行われることもありますので、参列される際には事前に詳細を確認することが大切です。
〜骨葬が行われる理由は?〜
骨葬が一般的でない地域で骨葬が行われる理由はさまざまであり、主に以下のケースが挙げられます。
【ご遺体の状態が良くない場合】
事故や事件などで故人となってしまった場合や、亡くなってからかなりの時間が経過している場合など、ご遺体の状態があまり良くないケースが考えられます。
こうした状況では、ご遺族の気持ちや衛生面を考慮し、葬儀の前に火葬をすることがあります。このような火葬のスタイルを「骨葬」または「前火葬」と呼びます。火葬後、ご遺骨を祭壇に安置するため、ご遺体の状態を気に病む不安要素が軽減され、故人を尊く送り出すことが可能となります。
【葬儀場所と離れた場所で亡くなった場合】
遠方で亡くなった方の遺体を遺族が都内で先に火葬し、後日遺骨を持ち帰って故郷で葬儀を行うケースは一般的に「骨葬」として知られています。
例えば、地方から上京した方が都内で亡くなった場合、遺族は故人を連れ帰り、故郷で葬儀を行いたいと考えることがあります。しかし、遺体の搬送費が高額になるなどの理由から、都内の火葬場で先に火葬することが選択されるのです。火葬後はご遺骨を手元に戻し、故郷で故人を家族や地域の方々と共に偲ぶ葬儀が行われます。このような形式の葬儀が骨葬に含まれます。
【海外で亡くなった場合】
海外で亡くなった場合も同様に、遺体の状態で帰国するケースもあれば、費用や法的な問題から遺骨で帰国し、後日に骨葬を行う場合もあります。
遺体の帰国は航空機の手配や搬送費用がかかることから、遺族にとって大きな負担となることがあります。そのため、遺体の帰国を避け、遺骨だけを持ち帰ってから骨葬を行うという選択肢が検討されることもあります。
【感染症で亡くなった場合】
エボラ出血熱やペストなど特定の感染症で亡くなった場合には、感染拡大を防止するために火葬が優先され、死亡後24時間以内に火葬を行うことが一般的です。このような感染症の場合、遺体が感染源となる可能性が高いため、速やかに火葬を行うことでリスクを軽減します。
そのため、感染症による死亡の場合には、火葬が先行し、その後に火葬後の葬儀が行われることが一般的です。
【地域の風習として残っているため】
地域や文化によって当たり前の慣習として行われることがあります。その地域で一般的な葬儀のスタイルや風習によって骨葬で行います。
【芸能人などの著名な方が亡くなった場合】
著名人が亡くなった場合、まず親族のみで密葬などの静かな葬儀が行われ、その後、故人の友人や関係者などを招いて故人を偲ぶ会やお別れの会を催すことがあります。特に後者の場合、多くの参列者が予想されるため、骨葬として進行することが多い傾向があります。
故人を偲ぶ会では、広く社会からの追悼を受け入れるため、故人の遺骨を祭壇に置いて参列者がお別れをする形式が一般的です。骨葬として行われることで、親族だけでなく、多くの人々が最後のお別れをする機会を持つことができます。
〜骨葬に参列する場合の注意点〜
参列時のマナーは、骨葬で行われる場合でも一般的な葬儀と同様に重要ですが、注意すべき点があります。それは、遺族に対して「なぜ骨葬で行うのか」と露骨に尋ねることを避けることです。
なぜなら、感染症や事故などが原因となって、遺族がやむを得ず骨葬を選択するケースもあるからです。遺族の希望とは異なる理由で骨葬が選ばれることがあり、遺族の心情を傷つける可能性があるためです。故人や遺族への配慮として、骨葬の理由を尋ねることは控えるべきです。
〜骨葬のメリット〜
遠方から故人を連れて帰る必要がある場合、先に火葬を行うことで搬送費用を抑えることができます。
また、葬儀については安置の日数や火葬場の混雑状況を気にする必要がなく、日にちや時間帯を柔軟に設定することができます。
大規模な葬儀やお別れの会を行う場合、骨葬を選択することで会場の選択肢が広がります。一般的に、ホテルなどは故人を安置することはできませんが、骨であれば持ち込める場所もあります。これにより、より広い範囲で葬儀を行うことができるでしょう。
〜骨葬のデメリット〜
骨葬では、参列者が故人の顔を見てお別れすることができないため、骨葬が一般的でない地域では先に火葬を行うことに疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。お葬式では故人に会えると考えられている方も少なくないので、骨葬の事情について理解されないこともありますし、尋ねられることもあるかもしれません。その際には、話しづらい事情を避けるためにも配慮が必要です。
近年はお葬式の形が多様化しているため、骨葬もひとつの選択肢となっています。しかし、骨葬が一般的でない地域で葬儀の前に火葬を行う場合、周囲の理解を得ることも大切です。
密葬と本葬を2度に分けて行う場合、葬儀の費用が2回分かかるため、一度で行う一般的な葬儀よりも高額になることもあります。葬儀の形式や費用について、事前に理解しておくことが大切です。
※ 菩提寺の了解を得られない場合があるので、
骨葬の場合、事前に菩提寺にその旨を相談しておくようにしましょう。
〜事前に骨葬であることを参列者には伝えるべき?〜
後火葬に慣れている参列者にとっては、骨葬を受け入れられない方もいることがあります。特に遠方から故人に会いに来る参列者もいるかもしれません。骨葬では故人の顔を一目見ることができないため、その点でショックを受ける参列者もいます。
こうしたトラブルを未然に防ぐために、骨葬の日時を連絡する際には、事前に事情を説明しておくことが重要です。参列者に骨葬の形式について理解してもらい、不快な思いをさせないよう配慮することが大切です。説明をすることで、理解と協力を得られる可能性が高まります。
〜骨葬を行いたい場合〜
骨葬が一般的な地域では、臨終後は通常の流れで通夜から火葬、葬儀を行うことができます。しかし、骨葬が一般的ではない地域では、葬儀社に骨葬で行いたい旨を明確に伝える必要があります。
もし何らかの事情で骨葬にしたい場合、火葬のみを個人で手配することは可能ですが、親族が亡くなるという大変な状況の中で手続きを行うのは容易ではありません。そういった場合でも、まず葬儀社を決定し、骨葬で行いたい旨を伝えることで、火葬も含めた段取りをサポートしてもらえるでしょう。葬儀を後日ゆっくり行いたいと考えている場合でも、葬儀社の専門知識とサポートを頼ることで、心の負担を軽減できます。
〜まとめ〜
火葬を終えたあとのお墓の取り扱いなど不安だというお声をたくさん聞きます。
またご両親が亡くなったときに不安になることはお墓だけでなく多岐にわたります。
こちらのコラムではご両親が亡くなったときに不安なことをランキングで紹介されています。
ぜひ参考にしてみてください。
この記事を監修した葬儀のプロよりコメント
骨葬にする場合は
周囲の理解を得ることが重要です
骨葬を選択する場合、参列者が故人の顔を見る機会がないことによるトラブルを避けるためにも、火葬のタイミングについて充分な案内を行うことが重要です。
この記事では、骨葬についての基本的な情報や注意点を解説していますので、骨葬を検討されている方は参考にしていただければと思います。
早稲田大学大学院にて研究。大学卒業後、業界最大手企業へ入社。ライフエンディング領域における多岐にわたる業務に従事し、幅広い分野を経験。仏教葬祭アドバイザー、消費生活アドバイザー、ファイナンシャルプランナー2級、高齢社会エキスパートの資格を取得。横浜葬儀社の事業責任者として、専門的なアドバイスとサポートを提供し、故人様とその家族様にとって安心した葬儀サービスを提供することに全力を注ぐ。